このまま暗いトンネルの世界へ2010年版のヤミ金事情/Business Media誠(2月19日)
改正貸金業法による規制強化で、正規業者の廃業が相次ぎ、お金を借りられない人が増えている。しかしそうした人たちの受け皿として、ヤミ金が増殖……。このような“負のスパイラル”が、いま貸金業界で広がりを見せている。
2002年ころからヤミ金の横行が社会問題となり、警察は取り締まりを強化。2003年には「ヤミ金融対策法」が施行され、その後、この問題は収束するかのように思われた。しかし2005年以降、ヤミ金事犯の検挙人数は700〜1000人ほどで推移しており、悪徳業者の撲滅にはほど遠いのが現状だ。
ヤミ金の手口は大きく分けて3つある。1つめは事務所などを持たず、連絡手段は携帯電話のみ。その携帯電話を使って、貸し付けや取り立てを行う「090金融」。2つめはヤミ金グループ間で債務者に関する情報を交換し、同じ債務者に次々と融資を行う「システム金融」。
3つめは高金利で貸し付けるが、手荒な取り立てを行わない「優しいヤミ金」だ。ヤミ金事情に詳しいノンフィクションライターの窪田順生氏は「『優しいヤミ金』は厳しい取り立てを行わないが、金利は10日で30〜50%と高い。ただ正規業者がお金を貸してくれないので、何度も利用する人が多い」としている。警察も「優しいヤミ金が増えている」ことは認識しているが、「相談者が来ないので、実態把握が難しい」(警察庁)と手をこまねいているようだ。
●なぜヤミ金が増えているのか
日本貸金業協会の調査によると、消費者金融を現在利用している人の12.2%は「ヤミ金を利用したことがある」という結果がでた。また、そのうち2.8%は「現在も利用中」だという。ヤミ金からお金を借りているのは「医療費などの緊急性が高いケースが多い」(日本貸金業協会)としている。また、ある大手消費者金融の幹部はこのように見ている。「経営難に追い込まれた正規業者が廃業し、ヤミ金に衣替えしているケースが目立っている。特に地方では業者と顧客の関係がより親密。なので以前から知っている業者がヤミ金になったという認識がないまま、お金を借りているのではないか」。
改正貸金業法を議論する金融庁のプロジェクトチームでも、ヤミ金問題が取り上げられている。警察庁は「生活経済対策管理官を新設し、ヤミ金などの生活経済事犯への対策を強化」することを強調した。しかし弁護士の宇都宮健児氏は「ヤミ金相談のため警察を訪れた際、いまだに『借りたお金は返せ』『元本だけでも返せ』といった対応をとる警察官がいる」と指摘。さらに「ヤミ金業者の取り締まりについて、弁護士、司法書士、警察などが連携を強化すべきではないか」と訴えた。
なぜ水面下で、ヤミ金が増えているのだろうか。その最大の要因は、2007年から2010年6月までに段階的に施行される改正貸金業法だ。この法律は多重債務者問題を解決するために、2006年12月に成立・公布されたもの。段階的に規制を強化し、2010年6月めどに貸出残高を収入の3分の1までとする総量規制のほか、上限金利を現行の年29.2%から15〜20%に引き下げる。
しかし総量規制の導入を見越して、消費者金融の貸付残高が減少の一途をたどっている。2006年3月末、消費者向けの貸付残高は10兆7000億円だったが、2009年3月末には6兆6000億円に減少。また成約率の低迷にも歯止めがかからない。消費者金融大手4社の成約率は62%(2006年4月〜6月)から、32%(2009年7月〜9月)へと30ポイントも減少した。
さらに上限金利の引き下げに対応するため、貸付金利も低下している。消費者金融大手4社の平均貸付金利は23%(2006年3月)から17.8%(2009年9月)に。貸付残高の減少と金利の低下は、貸金業者の体力を急速にむしばんでいった。業者数はピーク時(1986年)に4万7000社ほどあったが、2009年10月末時点では4752社と10分の1ほどに減少。現在も廃業する業者は後をたたず、「完全施行後にはさらに減少するだろう」(大手消費者金融)という見方が一般的だ。
●過払い金問題も大きい
貸金業者をさらに追い詰めているのが、過払い金返還請求だ。これは2006年1月に最高裁判所で、出資法と利息制限法で定められた2つの上限金利の間のグレーゾーン金利を違法とする判決が出たことに対する措置。この違法判決を受け、過去に取りすぎていた過払い利息の返還請求が貸金業者に殺到した。
「金利の引き下げによって、貸金業者の廃業や貸付残高の減少を引き起こしているが、過払い金問題の影響も大きい」(日本貸金業協会)といった声もあるほど。事実、過払い金返還請求は貸金業界の経営を圧迫している。消費者金融大手4社の2008年度返還総額は計5826億円、そして2009年度も同水準となる見通し。日本貸金業協会の試算によると、過払金返還請求の対応コストは3年間(2006年度〜2008年度)で4兆円を超える規模となっている。
●“暗いトンネル”へ突入するかもしれない
かつて我が世の春を謳歌(おうか)していた貸金業界であるが、いまやビジネスモデルが崩壊し、融資の蛇口を締めている格好だ。東京情報大学の堂下浩准教授は「改正貸金業法による規制強化は、貸金業者からお金を借りられない人を増やした。そして拒否された人たちの中には、お金を工面するためにヤミ金から借りているケースもある」と指摘した。
法律が招いたともいえるこの“混乱”に対し、政府はどのような手を打ってくるのだろうか。ハードランディングを避けるために法律の施行を遅らせることもできるが、亀井静香郵政・金融担当相は「予定通り2010年6月に完全施行を行う」という立場を崩していない。
改正貸金業法の完全施行まで、残り時間は少ない。貸金業界では「もはや時間切れ」といったあきらめムードも漂っており、このままいけば“暗いトンネル”へ突入することになりそうだ。
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